ダブって見える「円錐角膜」治療 ハードコンタクトが基本 悪化すると移植必要
目の黒い部分にあたる角膜は光を眼球の内部に導くレンズの役割を担っている。この角...
目の黒い部分にあたる角膜は光を眼球の内部に導くレンズの役割を担っている。この角膜が前方に突出するのが「円錐(えんすい)角膜」。あまり聞き慣れない病気だが、次第に乱視や近視が進み、悪化すると角膜移植が必要になることもある。ここ数年は進行を遅らせたり、症状を緩和させたりする新しい治療法も広がってきている。
都内に住む中学3年のA君(15)は乱視が進み、物がダブって見えるようになった。メガネでは矯正しきれなくなって近くの眼科を受診。東京大学医学部付属病院(東京・文京)を紹介され、初期の円錐角膜と診断された。
円錐角膜になると角膜の中央部が薄くなり、内部からの圧力に押し出される格好で前方に突出して、角膜が円錐形になってしまう。変形するためにレンズの役割をきちんと果たせなくなり、乱視や近視が進み、メガネによる矯正でも十分な視力が出なくなるというわけだ。東大病院の天野史郎准教授は「A君のように10代の思春期ごろに症状が始まり、30歳ごろには進行が止まることが多い」と説明する。
アトピー性皮膚炎などアレルギー体質の人に多いために目をこするのが一因だという説もあるが、なぜ発症するのか、原因は今もよく分かっていない。患者数も不明だが日本人だと2千人に1人程度の割合で発症するという推定もあり、男性にやや多い。発症初期だと診断が難しいことがあり、「角膜形状解析装置」と呼ぶコンピューターによる角膜の形状分析によって確定診断する。
もし円錐角膜と診断されたら、どのようにして視力を回復させるのか。
A君のように症状が出始めの段階では、まずはハードコンタクトレンズで矯正するのが一般的な対処法だ。ハードコンタクトレンズを装着すると、出っ張った角膜とコンタクトレンズのすき間に涙が入り込み、ゆがんでしまった角膜の形状を補う役割を果たしてくれるからだ。角膜の形状に合わせたオーダーメード型なので値段はやや高めで、1枚あたり2万~3万円が目安とされる。
症状が進行して角膜の出っ張りが激しくなると、コンタクトレンズを装着しても目の真ん中からポロポロずれてしまったり、レンズがこすれて角膜の真ん中が白く濁ってしまったりすることもある。
さらに角膜の裏側にある「デスメ膜」という膜が破裂すると角膜内に水分が入り込んで急激に白く濁り、強い視力障害を引き起こすこともある。「急性水腫」と呼ぶ症状で、数週間~数カ月程度でデスメ膜の再生とともに角膜の白濁は改善していくが、目に濁りが残ってしまうこともある。
コンタクトレンズで矯正しきれなくなった場合、最終的に角膜移植が必要になってしまう人もいる。ドナー(提供者)が現れるまでの待機期間は地域によって異なるが半年~2年程度。海外からの輸入角膜で移植を実施している医療機関もある。
以前は「全層移植」といって角膜を丸ごと取り換える手術が一般的だったが、近年は自分の角膜の内側を残し、外側だけを移植する手法も広がっている。免疫による拒絶反応が起こりにくいなどの利点があるからだ。
手術後の治療成績が良好とはいえ、角膜移植となると尻込みする人も多いだろう。
東京歯科大学市川総合病院(千葉県市川市)の島崎潤教授は「最近、ハードコンタクトレンズと角膜移植の間をつなぐ治療法も広がっている」と説明する。その一つが「角膜クロスリンキング(架橋)」。角膜にリボフラビン(ビタミンB2)という薬剤を点眼してから紫外線を照射する。薄くなった角膜が補強されて、症状の進行が抑えられる仕組みだ。10代など円錐角膜が進行中の段階で実施されることが多い。
逆に症状が進行してしまった人に適用されるのが「角膜内リング」。角膜の内部に半円状のリングを埋め込み、出っ張った角膜を平らに保つ。症状を改善できるが進行を防ぐ効果はなく、クロスリンキングと組み合わせて実施されることもある。
どちらの治療法とも、国内ではまだごく一部の医療機関でしか実施されていない。新しい治療法なので数十万円単位の費用がかかることが多く、受けるかどうかは納得できるまで医師と相談するのがよいだろう。
