中高年襲う目の病 眼科検診

眼圧・眼底など包括的に 40歳からは定期検査を

2010/5/10

年を重ねていくと老眼だけでなく、様々な目の病気にかかるリスクが高くなります。視力が落ちたり、視野が狭くなったり、最悪の場合は失明にもつながるだけに、できるだけ早めに治療することが大切です。病気によっては、視力回復も期待される新薬が登場するなど治療法の選択肢も増えています。日本経済新聞夕刊に掲載され、読者の反響の大きかった目の病についての最新事情を報告します。

眼科検診

メガネやコンタクトレンズで矯正しても良い方の目の視力が0・5を下回る「視覚障害」の人は現在、国内で160万人を超す。その約7割が60歳以上で、社会の高齢化とともに今後も急増が見込まれている。国立病院機構東京医療センターの山田昌和・視覚研究部部長は、視力検査に加えて複数の種類の眼科検査を受ける「包括的検診」を定期的に受けるべきだと訴える。山田部長に話を聞いた。

包括的な眼科検診の重要性を指摘している。視力検査だけではなぜ不十分なのか。

「視覚障害の原因は緑内障、糖尿病網膜症、変性近視、加齢黄斑変性、白内障の五大疾患で全体の4分の3を占める。こうした病気の多くは加齢が原因の慢性疾患で数年~20年程度かけてゆっくり進むため、視力が落ちるころには手遅れになりがち。白内障は進行しても治療で回復できるが、とくに緑内障や糖尿病網膜症は早期に発見することで治療や進行を遅らせる処置がしやすくなる」

「包括的検診では具体的には、(1)近視や乱視の程度を調べる屈折検査(2)眼球の圧力を測る眼圧検査(3)目に光を当てて内部を調べる細隙(げき)灯顕微鏡検査(4)目の内壁の写真を撮る眼底検査――を受ければフルメニューといえる。とくに眼圧検査では緑内障、細隙灯顕微鏡検査では角膜や水晶体の病気が見つかる可能性が高くなる」

こうした検査はどのようにすれば受けられるのか。

「どの検査も、病院やクリニックで受診できる。原則、健康保険が使え、自己負担は2千500~3千円。視覚障害の有病率が50歳代で増加することを考えれば、40歳ごろから5~10年おきに定期検査を受けるのが理想的だ。検診自体は全部受けても1~2時間で終わる」

「すべてを受診するのが大変な場合は、視力検査に加えて眼底検査を選ぶと効果的。五大疾患のうち白内障以外は網膜や視神経など眼底近くの異常に関連しているからだ。さらに、白内障は水晶体が濁る病気なので、眼底写真でも像の質が落ちるなどして、影響がとらえやすいと考えられる。人間ドックを受ける際には、眼底写真が含まれるかどうかチェックすることも大切だ」

「東京都内であれば、いくつかの区や市が指定医療機関での受診に対して助成制度がある。例えば杉並区の場合、40~60歳までの間、5年ごとに300円で受診可能。目黒区のように無料の自治体もある。希望者による申し込みが必要な場合や、特定の年齢に達した人にチケットを送付する場合など受診方法は様々だ」

包括的検診を社会として推進するにはコストもかかるのではないか。

「視覚障害の人が増えることによる社会的なデメリットは大きい。東京医療センターと順天堂大学、オーストラリアのメルボルン大学による共同調査によると、日本国内の視覚障害者は2007年には164万人で、日本社会が負担しているコストは約8兆8千億円という試算になった」

「8兆8千億円のうち、医療費や介護保険費など実際にかかる直接コストは約1兆3千億円。雇用率の低下や、ケアに当たる家族の負担など間接コストは約1兆6千億円だった。圧倒的に金額が大きかったのは、視覚障害者が疾患を抱えて生きることによるQOL(生活の質)の損失額で約5兆9千億円。目が不自由なことで失うQOLは、ほかの重大疾患と比べても大きいとされている」

「国内ではこうした定量調査をした例が少なく、今回の結果をほかの病気と相対比較することはできない。ただ、今後の高齢化で視覚障害者の数は30年に200万人まで増えると考えられる。予防や治療に力を入れることで社会全体の負担を減らすことが大切で、そのためにも包括的検診を推し進めるべきだ」

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